2015年01月13日

江戸のだめんず・うぉ〜か〜「冥土の飛脚」みてきた。

成人の日の3連休、まんなかの11日に、大阪に文楽遠征いってきました。二部を見てきたので、演目は「日吉丸稚桜(ひよしまるわかきのさくら)」「冥途の飛脚(めいどのひきゃく)」。二番目は、近松門左衛門の世話物の中でも特に有名なやつですね。

お正月公演では、舞台の上に「にらみ鯛」という特別の飾りがつくんです。可愛い!
2015年にらみ鯛.JPG

最初の「日吉丸稚桜」駒木山城中の段っていうのは、豊臣秀吉をモデルにした人物(木下藤吉)が出てくるんですけど、これがイケメンの「検非違使」っていうカシラを使うもので、出てきたとき「ええぇ〜秀吉ってサル顔じゃないの」って思っちゃって、なんか違和感感じながらみてて、もじもじしました。話はフィクションなので、別に秀吉設定使わなくても…と思ったんだけど、当時の人たちは「ああ、この(実在のちょっと前の)人物がモデルの二次創作なのね」と思いながら見るほうがわかりやすかったんだろうなぁ。

お話としては、歴史モノにありがちな首実験モノ。まずは織田信長をモデルとする「小田春長」が、義父「斉藤明舜」(斉藤道三がモデル)に離反されたため、斉藤の娘で自分の妻である「萬代姫」(まんよひめ…濃姫がモデル)を討つよう藤吉に命じたという話が前段にあります。お話は、藤吉の丁稚奉公時代の奉公先の主人「源左衛門」を殺した「鍛冶屋五郎助」(実は加東清忠という元武士で、斉藤家の元家臣=萬代姫の実家である斉藤家に恩義がある)、その娘「お政」、お政の夫で藤吉の家来の「茂助」(=源左衛門の妻の連れ子すなわち義理の息子で、五郎助とも妻の「お政」を通じて義理の親子←ややこしすぎ)、という入り組んだ人間関係を背景にしています。正直人間関係図を見てもなんのことやらさっぱりわからず、終わってから人間関係飲み込んだ感じ。

かいつまんで話すと、この茂助、舅の五郎助が自分の義理の父を殺した仇だと知り、妻のお政を離縁すると言い出すわけ。で、この妻お政が、悲嘆にくれて自害するんですが、そこにあらわれた五郎助、何故か茂助に斉藤明舜を討つための軍事上重要な機密を教えてやり、娘に対しては「男が理由で自殺するような娘は勘当だ」つって冷たく勘当するわけです。でもこれは、父親として、「勘当すれば仇である自分とは他人だから、娘を妻として認めてやってくれ」という親心なんですね。しかも、五郎助が斉藤の家臣、加藤清忠であることを見抜いた藤吉がそれを指摘すると、この五郎助やおら着物を脱ぎだして、その腹からは血が流れている=主君への忠義と婿への義理の板ばさみになりつつ、その両方に義理をたてるため、こっそり切腹しながら来てた、という「ええええ!」というびっくり展開。

とにかくねぇ、エクストリーム自害って感じなんですよ。お政も首を刀で突いたというのにずーっと色々喋っててなかなか死なない。五郎助とか登場時から腹切ってるはずなのに、これもずーっと喋っててこの段終わるまで死なない。いやそれ、おかしいって。無理あるって!と思うんですが、なんだろう、巨人の星が何週間分もの連載かけてやっと1試合おわるような感じでしょうか…。

ともあれ五郎助の説得に心うたれた茂助はお政を再び妻として、「生まれ変わったらまた一緒に」などと言い合いながら、息絶えようとする妻を抱くのですが、ここからもうひとつどんでん返し。何故か五郎助が娘の首を切り落としちゃう。えええ!そして五郎助は、藤吉に「これは萬代姫の首だ、首をあらためろ」と迫るのだ。

つまり五郎助は、元の主君の娘である萬代姫の命を救うために娘の首を差し出したわけですね。藤吉も忠義心に感心してこれを受け入れます。そして五郎助は、ようやく娘の頭を抱きかかえて不憫であった、しかしでかした、斉藤家への忠義のためによくぞ死んだ、と褒め、涙を流すわけ。藤吉が、五郎助の息子竹松を自分の家臣として加藤の名を残すぞと宣言して、よくわかんないけど男たちばっか盛り上がってこの段終わり。

歴史モノはだいたい毎回、武士が一般人には理解しがたい「義理」と「人情」の板ばさみになりながら、結果的に誰か死ぬ、という感じですね。いくら主君ったってそこまで義理だてしなきゃならないことか!?と思うし、登場する女たち(今回は五郎助の妻)はだいたい私と同様「なにも自分まで死ななくても」「なにも子どもを殺さなくても」というまっとうなことを言うんですが、男たちは聞いちゃいません。「要するにヒロイズムに酔ってるんだよ!それに毎回女が巻き込まれるんだよ!きいっ!」と思いながら見ることになります。疲れます。

ただ、娘を勘当して、「もう一度妻にしてやってくれ」という願いを聞き届けられた五郎助が、「聞いたか、娘、ではない、他所の女中」と、自分の娘に呼びかけるところ(本当は、「よかったなわが娘よ!」と言いたいところなのに、勘当したから「娘」じゃない、というところにこだわってる)が、あまりにも滑稽で、滑稽だから余計悲しくて、ちょっとだけ鼻の奥がツンとします。

お政が蓑助さんでした。死んでいく女性の、それでも愛する男の妻として死にたい情念と切なさを、すごくドラマチックに見せていただいた感じ。

そして、「冥土の飛脚」は淡路町の段、封印切の段、道中相合かごの3段で、全体のお話からいくと中段ぐらいまで。

前回公演のダイジェスト。


あらすじ、全体像はこちらのサイトの紹介がわかりやすいかも。

曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
近松 門左衛門
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ちなみに2月の国立劇場で「心中天の網島」の「時雨の炬燵」も見るし、去年「女殺油地獄」も見たし、あとは「曾根崎心中」が見られると、近松門左衛門の有名な世話物は結構おさえた感じになるなー。

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posted by なつめ at 01:26| Comment(1) | TrackBack(0) | マイブーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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