2015年08月16日

終戦の日に「野火」を観た。

8月入ってから仕事が完全に修羅場ってて、ああ、SJのDEVIL活動、あれで終わりだと思ってたけどまだ活動続くんだ、とか、リパケあるんだ、とか色々思いつつ、残業三昧で一日10時間もPCの前に座ってるのに家に戻ってまでPC開く元気がなかったので、ブログの更新もすっかりサボってました。その間にも色んなことがありすぎて、どこから手をつけていいのやら。

と言う状態なので、大人しくいちばん手前から始めることにします。今日みてきた映画の話を。8月15日は言うまでもなく、太平洋戦争が終結した日、日本の敗戦記念日なわけですが、今年はその終戦から70周年ということで、いまや世界に好戦的政治家として名を知られてしまったシンゾーの談話がどうなるか、という話が何週間も前から世間をにぎわせてましたね。

まあ実際出た談話は、「相変わらずの『約束守る気一切しないのでなんでもぺらぺら饒舌に喋ります』感はぷんぷんするけれども予想していたほどのヤバさではなく、『直接手は汚さない上級ネトウヨ』が非常に慎重に批判がきても誤魔化せる程度のウヨっぽさを漂わせつつ、一般保守には『まあいいんじゃないの』と言わせる内容」だったので、ギリギリほっとしたといえばほっとしましたが、太平洋戦争終結の記念日を前にいきなり日露戦争の勝ち自慢から入り、悪いのは日本じゃなくてブロック経済なんだよ〜んとか、しかし私は謝らないキリッ(`・ω・´)!!とか、「21世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリード」(今まで女性の人権問題とか性差別問題に関して、日本が世界をリードしてたことなんかあったか…???先進国中、男女の平等指数のビリッけつ案件は枚挙に暇がないので圧倒的ビリっていう意味ではリードしてますが)とか、ウヨ好きのしそうなタームをちりばめ、言ってることとやってることが全然違う系を恥ずかしげもなくぶっこんでくるあたりは流石だな、鉄面皮ってこういうこと言うんだな、って思いましたけど、そんな話をしてるとあっという間に夜が明けそうなのでそのへんはこの程度にしといて、今日みてきた映画は「野火」。



原作はこれ。読売文学賞を受賞した大岡昇平の小説(1951年発表)です。
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もともと行こうかな、いつ行こうかな、早くしないと東京終わっちゃうな、とか思いつつ、観たらしんどくなりそうな映画だし、タイミングつかめずにいたんですが、たとえ台風がきても絶対この週末観にいかねば、と思わせてくれたドキュメンタリー番組がありました。

NHKドキュメンタリー「女たちの太平洋戦争〜従軍看護婦 激戦地の記録〜
これ、8月21日(金)にも再放送(13時30分〜)があるので、みていない方には是非みていただきたいのですが、映画の舞台と同じ南方戦線に、従軍看護婦として赴いた女性たちのインタビューを中心とした番組だったんですね。これが、なんというかおそろしくガツンとくる内容だった。

赤十字から派遣された元看護婦たちは、80代90代の高齢女性ばかりですが、職業婦人だった人たちらしく、実に明晰な言葉で語る。当時赤十字の看護婦は、卒業後12年間召集があれば義務に応じる必要があった。生まれたばかりの乳飲み子を置いて、戦地に赴いた看護婦もいたそうです。

彼女たちを待っていたのは、医薬品どころか水も電気もろくに使えない病院と、大量の負傷者、マラリアなどの感染症患者、そして食糧難。補給はなく、後方だったはずの病院も戦況悪化につれいつの間にか前線となり、空爆で、ほんの一時前までは生きていた同僚が頭の半分が吹き飛んだ姿で見つかったときの様子(「あのとき何故無理にでも防空壕に連れていかなかったんだろうって」)、足手まといになる重症患者を殺せと指示され、静脈に空気を注射して殺したこと(「毒なんかなくても静脈に空気を入れたら人は死ぬんです。でもね、七転八倒してもがき苦しんで死ぬの。」)、死体を荼毘に付す余裕もなく、毎日死んでいく兵士の死体をトロッコで運んでは放り出し「ほれ、いっちょうあがり」と軽口を叩くほど感覚が麻痺していったこと、現地民から食料を強奪したこと(「私たち悪いことしたよ。土人が一所懸命に作った穀物を盗んで食べたんだもの。」など、自身の経験したおそらくは思い出したくもない地獄を、顔出しで、インタビュアーをまっすぐに見つめ、はっきりとした口調で語る姿をみていたら、これはもたもたしてないで観にいかなきゃ、とあらためて思ったの。生きながらえたこの人たちが、かくも赤裸々に戦場の現実を語り残そうとしている。この事実を真摯に受け止めれば、「なんか観ると気が重くなりそうだなぁ…」という理由でもたもたしていてはいけない、と思って。

渋谷に出るのが嫌だったので、立川の映画館にいったんですが、予約時にはけっこうガラガラかなーと思ってたんだけど、7割がたは席が埋まっていました。若い人もいましたが、かなり高齢の一人客も多かったです。ご遺族の方かな…とふと思ったりしました。塚本晋也監督って「鉄男」とかの監督でどっちかっていうとアングラなイメージなので、あれぐらい客層がばらけてるのはわりと以外でした。立川っていう場所柄もあるのかも。

私、思春期にちょうどベトナム戦争映画が非常に多く作られてた時期で、確か小学生で「地獄の黙示録」が公開、「キリング・フィールド」「ディア・ハンター」あたりはしばしばテレビでやってたし、「プラトーン」「カジュアリティーズ」「グッドモーニング・ベトナム」「フルメタル・ジャケット」「バーディ」どれも映画館でみました。「84★チャーリー・モピック ベトナムの照準」という非常にマイナーな映画もありますが、これはモキュメンタリー(ドキュメンタリー風フィクション)の傑作です。

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という具合で、かなり戦争もののバイオレンス表現には耐性のある私ですが、それでも野火はかなりしんどかった。この手の映像がダメな人は、たぶん15分と見てられないと思います。でも、ある程度耐性ある人は、観にいく価値がある映画だと思う。というか、是非多くの人に見てほしいと思います。この映画と、「女たちの太平洋戦争」での生存者たちの証言は、一致してるもの。人がモノ扱いされる戦場、そして戦死者の大半が餓死であった南方戦線の異常な空気が見事に映像化されています。

私、これを戦後生まれの監督が撮った、ということに深い意義があると思っていて、さっき挙げたドキュメンタリー観てても思いましたが、もう戦後70年にもなって、実際に戦争を経験して地獄をみた人たちもどんどん高齢化して、亡くなったり、呆けてしまったりして、証言を得ることが難しくなっている。映画監督だって、戦争経験のあるような監督はもう年取って現役引退したり亡くなったり、もはや日本では「経験者が語る」だけでは戦争の語り継ぎができなくなろうとしてるんですよね。

そんな中でふわっとした「一般市民は戦争の犠牲者」的なテンプレで、描く内容は特攻か広島長崎、せいぜいたまに戦艦もの、みたいな映画やドラマばかり製作されてたら、それは戦死者を「悼む」から、「美化する」に容易につながりかねないと思ってて、特攻映画を観て「この方たちの犠牲のお陰で尊い平和が…」とか言いながら同時に嫌韓・嫌中ツイート垂れ流している10代20代のTwitterアカウントなんかみてると、もう非常にヤバイ、と危機感をおぼえるわけです。

現に「女性たちの戦争」の放送のあと「従軍看護師さんを悪者として描き自虐史観をおしつけようとするサヨク番組だ」みたいなツイートみかけて、どういうオツムで見たらそういう理解になるんだよ…!って倒れ死にそうになりましたもん。あの証言者たちが何故あそこまで赤裸々に、味方である日本軍の加害性も含めて戦争を語ったのか。それは「戦争はそうやって人の人間性を奪ってしまう恐ろしいものであることを知って欲しい」「こんなことを二度と若い人たちに経験させたくない」という気持ちからでしょう。「悪意ある番組に悪者扱いされた」なんて彼女たちの誰が思うのか。第一そんな気持ちだったら、インタビューなんか応じないっての。

こういう憂慮すべき状態にあって、原作に対してもほぼ忠実な映画化を、戦後生まれの監督がやった、っていうことの意義をしみじみ感じたし、自分も戦後生まれだから知らないし伝えられない、じゃなくて、語り継ぐためにできることをしないといけないなぁ、と思いました。

NHK、近頃はすっかり政府広報化してジャーナリズム精神なんか見るも無残に崩壊しちゃってますが、こういういい仕事もしてまして、戦争証言アーカイブっていうところで、フィリピンにいた方の証言とか見られます。私この証言集、少しずつでも全部みようと思ってるんだけど、これとか、見て欲しいです。

永田勝美さん「見守るしかない餓死の兵士
最後のほうの「遺族の人は聞かされると、ほんとうのことを聞かされると嫌なんだろね。それは名誉の戦死であるとか、人を助けようと思って自分が犠牲になったんですよとか、そういう美談はあれば喜ぶよ。しかし、現地の戦地の実態というものは、そんな美談はないんですよ。そんな美しい戦争だなんてない。もうみんな目を背けるような話ばっかしでしょう。(中略)言ってそれが何かの形で受け継がれて、戦争というものは、やっぱりいかんものだなぁ、悪いんだなぁと、これを分かってもらうといいわけですよね。」という言葉を、しっかり受け止めないといけないと思う。

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posted by なつめ at 02:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月02日

6〜7月のおでかけメモ

大阪への文楽+SM TOWNライブ遠征が終わり、普段素通りしている京都もちょこっとだけ帰りにのぞいて東京に戻ってきましたが、そこからがかなりの怒涛の残業三昧の日々で、ブログなんか書く暇もなく、翌日の目覚ましをセットしようとして携帯持ったまま部屋のあかりは煌々とつけた状態で気絶するように寝てしまう、なんていう日々が続いていたので、すっかり間にあった出来事が抜けてしまいました。文楽→SMT→京都旅行についてはゆっくり書ければと思ってるんですが、とりあえず週末留守にしてたのでようやく手に入れたDEVILのCD、



トレカが金髪ヒニムでやったあ、となっていたところへリパケ情報が流れてきて、えっせむマジで財布休ませる気ないな、と戦慄しています。リパケは何曲追加になるのかなぁ。うう、どうせ曲のほうはiTunesで先行して買ってたので、リパケあるならまとめて買えばよかった…でもチャート大事だから…一位とれなかったけどでも大事だから…!!(←自分自身が納得するための言い訳)

で、6〜7月のお出かけメモ(主に展覧会)です。記録しとかないと忘れちゃうんで…。

とりあえず、6月に映画「海街ダイアリー」見てきたとこまでは記録してるんですよね。その翌日、6月28日ですが、東京で2つの展覧会をハシゴしてきました。

1つは、私の大好きな画家「鴨居玲」の没後30年記念展『踊り候え』@東京ステーションギャラリー。私、ステーションギャラリーって出来た頃結構好きでよく言ってて、高村光太郎とかバルテュスとか見た記憶があるんですが、駅を改装してから行くのは初めてで、なんかずいぶん広くなったような気がしました。気のせいかも知れませんが…

ちなみに、鴨居玲の個展は没後25周年のときに行って以来ですなわち5年ぶりだったんですが、自分的には2〜3年ぐらいしか経ってない気分だったので、時の流れの加速が恐ろしい今日この頃です。

RayCamoy2015.jpg

入り口のポスターの写真、ちょっと光ってしまった上に知らない人が映りこんでしまったので切らざるを得なかった…無念。

前回横浜でやったときは、ほぼ貸切みたいな状態で見たのですが、場所もあるのかずいぶんお客さんが多くて驚きました。明らかに鴨居没後生まれっぽい若いお客さんも多かったし、亡くなってからわりと定期的に回顧展をやっているせいか、現代画家なのに没後にファンが増えているというわりと珍しい例なんじゃないかという気がします。

私、一冊4万円もする画集を買ったのって鴨居玲が人生最初でたぶん最後だろうと思うんですが、それはもう好きだからっていうだけで、実は画集や図録で満足のいくものを手に入れたことがありません。鴨居玲の絵、特に油絵は、本当に本物を見てもらわないと、色が全然わからないと思います。黒を基調とするような絵はまあ図録や絵葉書になってもまだ見られるんですが、私が好きな教会シリーズの鮮やかなビリジアンぽい緑色とか青を、「これだ!」という感じで再現できてる印刷物には一度もお目にかかったことがないのです。画集で見ると、たぶんひたすら暗いイメージを持たれると思うんですが、オリジナルの色をとにかく見てほしい、という画家の一人です。

この展覧会はもう終わってしまったのですが、生地である石川の県立美術館が所蔵している作品が多いので、せっかく北陸新幹線も開通したことだし、是非一度いってみたいのです。こちらに県立美術館の所蔵作品のデータベースがあるんですが「かもいれい」で検索すると26件出てきます。今回はこれまであまり見たことのなかった晩年近くの裸婦像などが見られましたが、やっぱりこの「描けない」と本人が苦悩していた時期の作品は辛いんだよなぁ…。私みたいな絵のかけない一般人からしたら「上手いじゃん」「すごいじゃん」「描けてるじゃん」って話なんですが、本人の「描けない」という苦悩が滲み出ちゃっててつらい。疲れる。でも、好きなんですよねぇこの人の作品…一度でいいので、教会シリーズを集めた展覧会を企画して欲しいと願っています。ひろしま美術館も7点持ってるので、あちらに行く機会があれば観たい。

この日、ハシゴする順番として、鴨居怜→暁斎の順番にしたのは正解でした。逆だったらたぶんすごく鬱になって帰ってくることになったと思うので…本当に、同じ日に観たのに、ものすごく対照的な画家でした。暁斎っていうのは、私は戯画のイメージが強かったのですが、今回の展示「画鬼暁斎」(三菱一号館美術館)では、狩野派の正統な後継者としての作品も多く展示されていて、それがまたすごくクオリティの高いもので、印象が変わりました。たぶん、この人ピカソ系の人なんですよね。その気になればものすごいクラシックな手法でものすごくきちっとしたものが描ける。でも(時代の要請ももちろんあるんだけど)頼まれればどんなテイストの絵でも描けちゃうししかもものすごい分量の絵を描いてる。その多くが海外に流出したんだけど、それを遺族がものすごい執念でまた買い戻して、埼玉に3000点以上を収蔵する記念館があるんですよ。今回の展覧会が終わって作品が戻ったら、そっちの記念館にも行ってみようかなーと思ってます。

前期・後期に展示内容がわかれていて、前期の展示は今日でおしまいなんですが、後期も行こうかなぁーどうしようかなぁーと迷っております。暁斎が可愛がって弟子にもした、イギリス人建築家のジョサイア・コンドルとの師弟関係を軸にしたキュレーションで、そこもまた面白いんです。暁斎の研究が広まってる背景って、やはりこのコンドルが暁斎と行動をともにして、その絵画作成の現場の記録を逐一書き残しているっていうことが大きいと思うんですよね。こういうのって滅多にないですもん。

でまた、暁斎がコンテエルくん、コンテエルくん、と読んでコンドルを可愛がるわけです。毎日書いていた絵日記にもたびたび登場するんですが、その絵日記からとった絵のついてお猪口がグッズになってまして、これはカップ酒と一緒に思わず購入してしまいましたよ…可愛い!

kyosai.jpg
重ねたお猪口の下のあぐらかいてるのがコンテエルくん。上の布団かぶって狸ね入りしているのは、暁斎自身の「ナマケモノ」図だそうです。この調子で、とにかく陽気な天才って感じでした。妖怪絵とかもあるんだけど、なんというか、あまり湿り気がないんですよね。本当にピカソ系。作品多いし、結構歩き回って疲れるんですが、でも見た後妙に元気になる展覧会でした。

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posted by なつめ at 02:39| Comment(0) | TrackBack(0) | おでかけメモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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