2006年02月04日

ブコウスキー『死をポケットに入れて』

仕事がクソ忙しく、毎日2〜3時間睡眠で乗り切っているさなか、ぶちきれたといいましょうか、我慢できなくなって、レイトショーのこんなドキュメンタリー映画を見てきました。

ブコウスキー オールド・パンク】…公式HP。ブコウスキーのプロフィールについてはこちら

というわけで、今回オススメの本は、この一冊です。


『死をポケットに入れて』
チャールズ・ブコウスキー著/中川五郎・訳




あえて、というより詩人である彼の、詩作品は選べませんでした。日本語訳で読むようなものではないからです。上のプロフィールに書いてあるとおり、エッセイや小説は、かなりの数の日本語訳を簡単に入手できます。

【参照URL】…チャールズ・ブコウスキーの本

映画のほうは、ちょっと、『ブコウスキーの酔いどれ紀行』的な作品でした。彼がワインを片手に行うポエトリー・リーディングの会の映像記録と、彼を知る人たちのインタビューからなる、伝記的ドキュメンタリー映画です。

しかし残念ながら、やっぱり二時間睡眠で出社して、ギリギリまで働いてレイトショーに駆け込んで、居心地のいいソファ席で、ポエトリー・リーディングとインタビュー、ときには静止画に詩の朗読がインサートされるような映像2時間っていうのは、ちょいときつかったです。途中で20分ぐらい寝てしまった。記憶がとんでます。残念。でも、最初のほうとラストのほうは見られたから、1500円中1000円分ぐらいはもとが取れただろう。何よりも彼の肉声での詩の朗読が聞けたのが最高でした。酔いどれた彼の声で語られてこそ、ますます彼の詩は、唯一無二のものになるような気がします。

映画のほうに話が傾きすぎましたが、『詩』ではなくて、『死をポケットに入れて』…これはブコウスキー最晩年の日記です。ブコウスキーは世間的には遅咲きの詩人・作家でした。この晩年の日記は、予想を超えての栄光を手にした吾らがハンクことブコウスキーが、その主に孤独であることによって形成されてきた彼の人生の最後のほうになって、彼の生活に闖入してこようとする邪魔者たちに悪態をつきながら、愛用のパソコンに向かい、詩について、死について、競馬について、疾走する文体で書き綴った日記。

ブコウスキーは大方の予想を裏切って、アルコール中毒による肝臓がんなんかじゃなく、白血病で亡くなりました。そして映画を見た私は、彼の小説を読んでうけていた印象を裏切り、酔いどれたままでもどこか人のよい優しさと弱さと、強靭な意志の同居する、ごく真面目な飲んだくれの作家の姿をそこに見たのでした。ただ世間に反抗するだけのワカゾーパンクではなくて。そこに見えたのは、ごく生真面目な生真面目な、オールド・パンクの姿でした。

わたしは誰と競い合っているわけでもないし、不朽の名声に思いを巡らすようなこともまったくない。そんなものはくそくらえだ。生きている間に何をするかが問題なのだ。太陽の光が燦々と降り注ぐ中、ゲートがぱっと開かれ、馬たちが光の中を疾走し、所属の厩舎の派手な色の服と帽子を纏った小さくて勇敢な悪魔たち、すなわち騎手たちは、誰もが勝利をめざし、見事に自分のものにする。行動と挑戦の中にこそ栄光はあるのだ。死などどうだっていい。大切なのは、今日、今日、今日なのだ。まさに然り。

『死をポケットに入れて』(河出書房新社版より)


老いてなお。読みたいものがないから書く。自分が書く。そのパワーに圧倒されつつ読んだ本でした。そこにあるのは壮絶な孤独に思われました。けれど、映画で見た彼の姿は、ほんの少し、小説やエッセイのイメージとは違ったかな。彼の死に立ち会った妻たちのうちの一人の証言が、映画のラストで語られます。(実際の彼は若い頃酷いニキビに悩まされ、あばた顔をしていました。)

『それが最期だと分かった。…しばらくの間彼を抱きしめた。それから見てみると、彼の顔は、そう、不意に穏やかになって…彼の肌は、まるで生まれたての赤ん坊のように、すべすべとしていた。』

(記憶で書いてますから実際とは違うかも。
映画『ブコウスキー オールド・パンク』より)


孤独は、決して詩人を孤立はさせなかった。極端な話、人間なんてみんな一人で生まれて一人で死ぬものです。その期間にあるのは広大な孤独の塊であって、多くの人はそれに目を向けないようにして自分をごまかしながら生きていくのだけど。あばただらけの彼の容姿は、実際的な孤独から彼を解放しなかったし、だからこそ、多くの人たちの心の芯にある、絶対的な孤独にその言葉はつきささり、人を捕らえて離さないのではないかと思うのです。

少年期の彼を知りたければ、こちらの一冊もオススメです。


『くそったれ!少年時代』
チャールズ・ブコウスキー著/中川五郎・訳









posted by なつめ at 00:58| Comment(0) | TrackBack(1) | おとなが読む本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

シアターキノで「Bukowski」見た
Excerpt:  シアターキノで「BUKOWSKI OLD PANK(BORN INTO THIS)」を見た。  面白い。  しかしブコウスキーを知らない人には、何がなんだかわからない映画ではある。  そのうちDV..
Weblog: BNN金子の「今日のニュース」
Tracked: 2006-04-21 19:59
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。