2010年08月22日

鴨居玲展、借りぐらしのアリエッティ

昨日は、チョビは塾合宿で不在、ノルマなしの休日バンザイ!ということで、行きたかった展覧会にいってきました。

没後25年 鴨居玲展「終わらない旅」(横浜そごう美術館)

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没後5年か10年ぐらいの回顧展のときに、テレビでたまたま見たドキュメンタリー番組でガツンとやられて、大好きになった画家です。何万円もする画廊のカタログを、清水の舞台から飛び降りる気分で購入した経験のある唯一の画家。

鴨居玲にひかれたのは、私がそもそもゴヤのファンだったからだろうなと思う。スペインに長く滞在し、そこで知り合った市井の人々の表情を多く描いた鴨居玲、また特に手足を失った傷病兵や酔っ払い、ピエロなどの一瞬の動きや表情を巧みに切り取りキャンバスに定着する鴨居玲の画風は、堀田善衛の『ゴヤ』を父の書棚で見つけて耽読し、スペイン独立戦争シリーズや、『黒い絵』シリーズをなんとしても見たい見たいと思ってきた私を一気に魅了した。セザンヌのように背景を省略した薄明かりの中に浮かび上がる人物、また暗がりの中に浮かび上がる人物、こんな絵を描く日本人がいたのか!という衝撃。西洋画と日本画のどうたら、とかいうありがちな自己制約を飛び越えた才能がそこにある感じ。

でも、まとまったコレクションは都内にはなく、鴨居玲ゆかりの地である兵庫、長崎あたりの美術館にあるらしいということしか分からず。いつか旅行してでも見るぞ!と思ってる間にこんなに時間が流れた。没後25年。ちなみに美術評論家の坂崎乙郎という人がいて、この人の評論もすごくいいのだけど、彼も鴨居玲を高く評価していた。そしてこの人も、鴨居玲と同じく1985年に若くして世を去っている。

はじめてオリジナルを見られるという期待でわくわくしながら横浜そごうに行ってきた。車じゃなく横浜にいくのも実ははじめて。駅でかっ!百貨店でかっ!とびっくりしながら 6階の美術館へ。

薄暗い展示室は、しんとしていた。わかる。鴨居玲の絵は基本的に暗い。重苦しく胸が裂かれる。楽しくお喋りしながら見られる絵じゃないのだ。

展示された作品の数は決して多くはなかったが、上のような感じでまとまったコレクションはなさそうなので、代表作がそろっている今回の展示はまあまあ悪くないと思う。スペイン時代以来の恋人である富山栄美子による写真パネルも多く展示。出たとこでカタログだけじゃなくつい写真集も買ってしまいました。鴨居玲という人は実にハンサムなのだ。写真も絵になる。

今回一番楽しみにしていたのは、教会シリーズ。このシリーズの一作は、ミッテランが購入したという。前述のドキュメンタリーにも取り上げられており、他の人物画とは異なる作風だがひどく心を惹かれた。今回の展示では、4点ほどの教会の絵があった。深い水の底に沈んだような、出入り口も窓もない教会の絵。鴨居玲がもう少し長生きしたら、このシリーズはどう展開したんだろう、と思わずにはいられない。

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残念ながら、この青はオリジナルとは全然違う。本物はもっと鉱物的な、深い深い青だ。画集でみていて、鴨居玲は赤と黒、光と闇の画家だ、と思っていたんだけど、今回オリジナルを見ての一番の収穫は、鴨居玲がそのほかにものすごく魅力的なブルーを持っていたということを知ったこと。代表作「望郷を歌う」も、画集でもっていたイメージとは違う青緑の世界だった。この色は、印刷だと表現できないんだなぁきっと。これだけでも横浜まで出かけていった価値がある。

晩年の代表作「私」は、そのコーナーにそれ一点が展示され、大きな舞台にたったひとりの観客として立つように、作品と対峙することができる構成になっている(他のお客さんの波があるからタイミングはあるけど)。よい展示。ひとりの年配の男性が目頭を押さえていた。

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カタログに写真集に関連本と、大人買いしたので腕が抜けそうになりつつ、せっかくのオフなので、映画も見ることに。

短めの作品ということで、ジブリの『借りぐらしのアリエッティ』を選びました。



ここ数年のジブリ作品は宮崎駿のノイローゼ演出がはなはだしく(<『ポニョ』は怯えた子供が号泣したという話をあちこちで聞いた)、また声優の選び方も酷くて(なんでキムタク?とか)、とても金払って劇場で見るものには思えなかったので、ずっと避けていましたが、監督はジブリの若手さんだというし、現代美術館の『借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展』というのが実に面白そうで、久々に劇場で見る気になったのです。

小金井あたりが舞台ということでしたが、トトロ以来の魅力的な世界観で、よかったなぁ。二人の老婆が暮らす古い家の感じ、土の匂い、夏の草のかおり。あと、アリエッティの表情(顔も全身も)にいちいち萌えられる映画です。彼女が笑ったり泣いたり怒ったりするたび、もういちいち胸キュンです。オッサン気分。

藤原竜也だけがイマイチ彼である必要性がわからずアレでしたが、その他の声優陣はなかなかよかったです。三浦友和かっこいいじゃん、とか。

トトロほど子供向きではありません。どちらかといえば地味な物語。子供に見せるなら小学校高学年ぐらいからかな。しかしジブリが本当に久しぶりに、宮崎駿の妙なアーティスト嗜好からきちんと距離を置いた、繰り返し観賞に耐えるスタンダードな作品をリリースしてきたっていうことには実に意味があると思う。若手がみんな宮崎氏に潰されちゃうのが問題、みたいな事務所だったわけで。控え目だけれど細やかな演出で、魅力的な小人の少女を描いたまろこと米林宏昌監督、この人なかなかいいと思います。


ラベル:アート
posted by なつめ at 12:55| Comment(0) | TrackBack(0) | おでかけメモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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