2012年08月23日

ステレオタイプを解体する…「朝鮮半島をどう見るか」

前の特別企画のエントリに沢山のコメントありがとうございます。お返事書かなきゃと思いつつ、今週悪夢のように忙しいものですっぽかしですみません。で、あのエントリに書いた本、読了したのでちょっと感想をば。


朝鮮半島をどう見るか (集英社新書)
木村 幹
集英社
売り上げランキング: 37608


会社の往復の電車の中で二日で読めました。タイトルは堅苦しいですが、意外と誰でもすっと読める本です。そしてすんごく面白い!大変エキサイティングな本でした。

ちょっと期待してた「近現代史をざっと通読」っていうのとは違ったんですけど、でもこの本チョイスした自分ちょっと正解!と思った。ユーモアたっぷりの導入部から始まって、若い学生の問いに答える、というスタイルで、「親」朝鮮半島的⇔「反」朝鮮半島的、という正反対の立場にあっても、我々日本人が抱きがちな朝鮮半島に関するステレオタイプの理解・解釈を、データや歴史的事実をふんだんに提示しつつ、実に鮮やかな反証でもって、ひとつひとつ切り崩していく。

これ、別に朝鮮半島について興味がない人でも、一度読んでおくといいという気がします。「こんな感じがする」という印象だけでものごとを「わかった」気になってしまうってことはものすごく多くて、そのことが正確な事実の理解を妨げたり、ズレた結論に結びつくことってしばしばあるのですが、そういうときめんどくさがらずに「データ」にあたってみることの大切さがよくわかるし、そうして「目からウロコ」が落ちた状態で、どこにでも存在するバイアスというものをきっちり見分け、そのバイアスを勘定に入れた上で物事を見聞きし、自分なりに把握した上で、そのことに対する自分のスタンスを決定する、という、誰もがオトナになるまでに身につけるべき技術の指南書として、非常に優れていると思う。



竹島ツイートに関する韓国国内での教育問題について「彼らは(我々日本人と違って)間違った歴史を学んでいるんだから、かわいそうなので大目にみてやらねばならない」という解釈をしている人は少なからずいるようですが、それもまたちょっとズレてます。そんなものは誰がどこに立っているかの違いと国際政治の上でのタイミングや構造的要求でしかないので、それに対してどっちが「正しい」とか「正しくない」とか言うのは非常に不毛なんです。どっかの市長が「お互い徹底的に議論して決着つけようぜ」なんて言ってるのは愚の骨頂です。それよりもそういうバイアスがどうして生まれるのか、を見極めることのほうがよほど有用です。

バイアス、という意味では新聞とかテレビのニュースとか、誰かのブログの記事なんかでもそうした「偏り」を見極めて読むのは大事です。何度も書いてますが私はうっすら桃色ぐらいのリベラル教育受けてきたので、このブログ読まれる方は私が言うことって基本的にそういうバイアスがかかってる、ってことを意識して読んだほうがいいんです。こういうのいちいち宣言してる人は少ないとおもうので、たいていはその人が語った内容から傾向を判断するしかないんですが。とにかく「何が」言われたかも大事ですが「誰が」言ったかも大事なんです。「白か黒か」を議論するより、そういうバイアスの存在を見極めた上で、こういう人はこういう、ああいう人はああいう。そのへん総合的に考えて、じゃあ自分はどう思うのか、を「自分で」判断する。これ重要。

しまったまた政治の話になりかけてるのでちょっとこのへんで置いといて、とにかくそんな観点から、高校生以上の方には断固オススメしたい一冊です。これだけ具体的かつ鮮やかに、ステレオタイプの解体と思考の再構築をやって見せながら、さらに自力でその先へ進むことを、ニコニコしながら求めてくる。大学教授でもこういうドSタイプの先生大好きです。「学ぶ」ことの意味を、ひとが生きるうえで空気を吸うような営みとして、こんな風にすっきりと垣間見させてくれる先生って、大学とかいってもなかなかいないですよ。

これとあわせてオススメしたいのが、以前もちょっと紹介したこの一冊。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ
加藤 陽子
朝日出版社
売り上げランキング: 1237


中高生向けの特別講義を書籍化したものですが、これもホントにスリリング&エキサイティング。どこの国の政治家だって、そんなに馬鹿じゃなかったはずなのに、どうしてあの戦争やこの戦争は起こってしまったのか?過去のさまざまな戦争という失敗の歴史を振り返りつつ、それが起きる以前の国際情勢やキーパーソンの動きなど、様々な歴史的事実をもとに、「開戦」に至る流れを構造的に解釈していく。

「歴史って暗記物でしょ」というそれこそ「ステレオタイプ」な印象を、この本も実に鮮やかに切り崩してくれます。こうした過去の出来事の構造的な分析を一通り見た上で、今日本に住んでいる自分の目の前で起こっている数々の政治的なイベントや、遠い国の戦乱の状況なんかを見ると、そういう座標軸のずらし方を知る以前とは、視界が全然違ってくることを実感できると思います。こっちは歴史好きなら中学生以上、そうでなくても高校生以上なら、誰でもすっと読めるはず。

やーそれにしても面白いです。私は小説とか詩とかも大好きなんですが(文学部卒だし)、でもこういう科学的な分野もわりとすき。難しいことは嫌い、勉強は嫌い、と思ってる人にこそ是非とも読んでみて欲しいです。だってホントに面白いんだもん。推理小説を読むような楽しさがありますよ。オススメ。


posted by なつめ at 01:19| Comment(4) | TrackBack(0) | おとなが読む本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も読みました。本当に鮮やか!爽快感すら感じました。自分もステレオタイプに影響されていたんだな〜。基本的データすら見ず、いや見えずだった私。常識を疑って自分で考え直す。想像力をもって見つめ直す。新しいドアが少し開いたように思います。オススメありがとうございました!(*^o^*)

そして、なつめさんのドS表現に笑ってしまいました。確かにドSですよね!
Posted by はしし at 2012年08月23日 12:56
難しいこと嫌い、勉強嫌い…。
正しく私のことでございます(笑)
なので、いろいろスルーしてきた事もたくさんあります^_^;
そんな私にも大好きな推理小説のように爽快に読める本ならば、ぜひ読んでみたいと思います。
Posted by のの at 2012年08月24日 10:50
はじめまして、日課のように寄らせて頂いていましたがコメントは初めてします。

朝鮮半島の本、明日買いたいと思います。
いい大人なのに、歴史は苦手、社会問題は苦手とか思ってる自分がちょっと恥ずかしいです。

お勧めブログ書いて頂いてありがとうございます。
こういう機会でもなければ、きっと手にしようとも思わなかったのではと思っています。

もっと勉強しなくては。
Posted by やまこ at 2012年08月24日 11:05
>「こんな感じがする」という印象だけでものごとを「わかった」気になってしまうってことはものすごく多くて
これまさしく私の事だと思いました。今まさに読んでおくべき物だと思ってなつめさんが紹介して下さった本読んでみようと思います。
Posted by ナオ at 2012年08月25日 21:06
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