2005年08月04日

村上春樹『風の歌を聴け』


夏がくるとなんとなく読みたくなる
村上春樹『風の歌を聴け』講談社文庫


今日は会社の健康診断があって、午前中クリニックに行ってました。暇つぶしに、すごく久しぶりに買った村上春樹の文庫本を持っていって(<でもなんで買ったんだか覚えてない。買って置いてあったやつ)、採血やら心電図やら待っている間に読んで、結局2時間で読み終わってしまった。持っていたのは『神の子どもたちはみな踊る』。神戸の震災のあとに書かれた短編集。

率直に言うとあまりよいと思う作品はなかった。強いて選ぶなら「タイランド」ぐらい。更年期障害の女医がタイのバカンスで出会う、少し不思議な出来事と癒しの物語。

村上春樹は『ノルウェイの森』で終わった、と思っている私はその後のサクヒンはほとんど読んでいないか読んでもあまりにつまらなくて売っちゃった、ということばかりなのだが、「タイランド」は手元に置いてもいいかなと思える作品ではあった。けれど、デビュー作当時の煌きはもうないなあ。残念ながら。

『風の歌を聴け』は、言わずと知れた村上春樹のデビュー作。群像の新人賞を受賞した作品です。ときは1970年の夏。海辺の町に帰省した「僕」と「鼠」と女の子たちの夏の物語。ビールとジャズと、恋愛と、それから死についての記憶。

デビュー作にはおよそ作家のすべてが詰まっている、というけれど、これもまた例外ではない。無駄なところがない、っていうのがいいな。ここからはじまる三部作のうちに村上春樹は成長しちゃって、「村上春樹らしさ」っていうのを身に着けてしまった。なので、ある時期からの彼の作品は、「村上春樹らしい」ということを除けばほとんどなにもない、というような作品になってしまっているような気がする。中期以降のファンの方には失礼かも知れないけれど。

だけど、このデビュー作は違うんだなあやっぱり。まだお酒もジャズも恋愛もろくに知らない中学生の頃にはじめて手にとって、たぶん高校生ぐらいで一番多く読んだだろうと思う。今にして思うとナマイキ。というか分かってなかったろうと思うのだが。ブローティガンにKOされたのと、馬鹿売れした『ノルウェイの森』がむしろ自分にはどうにも堕落に思えたのと、そんなこんなで徐々に村上春樹小説から卒業していくのですが、これを読むとなんとなくその中高生当時のほろ苦い思い出も、脊髄反射的に色々と思い出されたりして。

どんなに気障だろうとなんだろうと。そのバタ臭い台詞と文章と、学生時代に入り浸っていたバーのざわめきが(<ここはジェイズバーとは違ってモータウンの音楽がメインだったけど)、8月になるとなんだか恋しくなったりするのです。


posted by なつめ at 00:43| Comment(2) | TrackBack(0) | おとなが読む本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すげー、すげー、すげー懐かしいです!!

高校生くらいの頃だったか、つきあってた彼氏からもらって読んだ本。

なんだかタイトルだけ読んで、あの頃にトリップしちゃいました。
Posted by LIVE at 2005年08月05日 19:53
そうそう、私もこれ読むと学生時代にトリップしちゃうんですよ、なんだか…。

つきあってた彼氏にもらった本かあ。学生時代に5年つきあった彼にもらった本はけっこう沢山あって、今でもお気に入りのがいっぱいあります。
西脇順三郎詩集とか。吉田健一とかね。

煙草のみだったので、本を手にとるとまだほのかに彼の煙草のにおいがたちのぼったりする。ちょっとブンガクテキ。
Posted by なつめ at 2005年08月07日 00:26
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