2005年08月07日

川上弘美『椰子・椰子』…けだるい夏の午後に読む

暑いです。暑い暑いというとなお暑いといいますがそれでも暑い。今日子どもと一緒に区営プールに行ってきたんですが、気温37度の水温31度ってもうなんていうか。東京ももはや熱帯じゃのうと思ってしまいました。バナナとか椰子とか栽培できるようになったり。

椰子つながりって訳じゃないけど、こういう真夏にはみっしり文字のつまった長編小説はちょっとしんどくなったりして、でも暑いし昼寝しようにも暑くて寝るに寝られんし…っていうような、ぐったりまったりした夏の午後向けの一冊。


川上弘美・著/山口マオ・イラストとアート
『椰子・椰子』新潮文庫

なんというか、不思議な本です。春夏秋冬の4つのパートにわかれた日記と、それぞれの季節ごとに短編小説がひとつ、それを山口マオのアートワークが取り囲む、という構成になってます。川上弘美さんは『センセイの鞄』みたいな切ない恋愛小説もいいのですが、『椰子・椰子』みたいな、ご本人いわく「うそばなし」系の小説も好きです。

日記を書いている主人公は専業主婦らしく、子どももふたりいるようなのですが、もぐらと一緒に写真をとったり、一月ほど冬眠してたり、「片思いのひと」と一緒にお祓いに行って帰りに水羊羹を食べたり、公民館の奇跡実演講座に出席したり、女の子ばかりの数学コンテストに参加してみたりと、わりかしアクティブに過ごしているようにも思えなくもない。けれど全編とおして、奇妙なのんびりゆったり感に包まれているので、読み進んでいくうちにその空気が心地よくなってきて、そのうち三島行きの電車の貸切車両にテナガザルが何十匹も乗っていたとか聞いてもさして驚かなくなってしまうから不思議。

間にはさみこまれている短編の、「ぺたぺたさん」「オランダ水牛」なんか特に好きです。このあたりは恋愛小説家としての川上弘美の面目躍如っていう感じ。

おどおどして転ぶばかりじゃ人生渡っていけない、とわたしは心に期した。「好き好き大好き」と叫ぶなり、わたしは恋人にローキックを浴びせかけた。
「オランダ水牛」より


とかって、上手い下手とかなんとかいうより、もうただ好きか嫌いかでしかないとは思うんだけど、私はこんな文章がなんとも言えず好きです。


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posted by なつめ at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | おとなが読む本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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